「パンドラの匣」太宰 治

パンドラの匣 読書

「パンドラの匣」太宰 治 新潮文庫 (520円+税)

こちらもツイッターのTLで流れてきました。
「正義と微笑」「パンドラの匣」の2つの作品が収録されています。

「正義と微笑」より

「勉強というものは、いいものだ。代数や幾何の勉強が、学校を卒業してしまえば、もう何の役にも立たないものだと思っている人もあるようだが、大間違いだ。植物でも、動物でも、物理でも化学でも、時間のゆるす限り勉強して置かなければならん。日常の生活に直接役に立たないような勉強こそ、将来、君たちの人格を完成させるのだ。何も自分の知識を誇る必要はない。勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。カルチュアというのは、公式や単語をたくさん暗記している事ではなくて、心を広く持つという事なんだ。つまり、愛するという事を知る事だ。学生時代に不勉強だった人は、社会に出てからも、かならずむごいエゴイストだ。学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。けれども、全部忘れてしまっても、その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。これだ。これが貴いのだ。勉強しなければいかん。そうしてその学問を、生活に無理に直接に役立てようとあせってはいかん。ゆったりと、真にカルチベートされた人間になれ!」(本書19ページより)

この文章を読むだけでも価値のある一冊。

上記の引用は「正義と微笑」の最初のほうで、主人公 芹川 進が通う学校の教師 黒田が学校を去る前に学生たちにいった言葉です。
この文章を読むだけでも、520円+消費税の価値はありますね。
気持ちが迷ったり、弱ったりしたときに、思い出します。

「正義と微笑」が発表されたのは昭和17年(1942年)6月だそうです。
太平洋戦争が始まった翌年の発表であり、日本じゅうが戦争一色の頃のことです。

「正義と微笑」が発表された翌年には、学徒動員や学徒出陣が実施されることになりました。
学生が労働者とされたり、戦地に送り込まれたりすることが起きました。

こんな出来事があったのは100年も前のことではないんですよね。

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