「かがみの孤城 上・下」辻村 深月

20230404 読書

「かがみの孤城 上・下」辻村 深月/作 村山 竜大/絵  ポプラキミノベル(各730円+税)

もともとは子ども向けの作品だったようです。しかし、大人の読者も多く、2018年に「本屋大賞」第1位となりました。
2022年末には映画化、公開され、また新たなファンを増やしているのではと思います。

あらすじ

中学1年の安西こころは、同じクラスの真田美織とそのグループの嫌がらせが原因で学校に通うことができなくなります。
ひきこもっていたある日、こころの部屋の鏡が光り、吸い込まれてしまいます。
鏡の向こう側には童話に出てくるようなお城があり、そこには、こころがまったく知らない6人の中学生がいました。

お城には「オオカミさま」と呼ばれる少女がいました。彼女は「城に隠された鍵を探し出すことができたら、どんな願いでもかなえてやろう」といいました。

鍵探しの期限は1年間。
こころと6人の中学生は、学校のように城に通い、夕方には帰る生活を送ることになります。

見ず知らずのこころと6人の中学生たちですが、実は・・・

リアルな描写

こころが不登校になった原因を作った、真田美織とそのグループの女子たちがどこにでもいるなーというところが凄いです。作者様の体験?取材力?なのでしょうか。

真田美織の彼氏が実はこころのことが好きだった、みたいなことが原因で、こころは真田美織から陰湿な嫌がらせをうけます。
しまいには、真田美織は取り巻きを引き連れて、こころの自宅に押し掛け、ドアを乱暴に叩く、大声でわめくなどの狼藉を働くのです。
このとき、こころは不登校で自宅に1人でいました。(こころの両親は共働きです。)
相手が女子だけとはいえ、集団でこんなことをされたら、本当に怖いと思います。このシーンの描写は読んでいても怖かったです。

さらに、リアルな描写は、こころや真田美織の担任教師「イダ先」にも表れています。
本名は「伊田」(井田やったかも)ですが、真田美織は「イダ先」と呼んでいて、本人もそれを「フレンドリー」だと喜んでいる教師です。

教師と学生(生徒)の間に、親しみは必要であっても、礼節を守らない関係は不要ではないでしょうか?

ワタシはイケズな人間なので、もっと深読みすれば、うわべだけのフレンドリーさは、ことなかれ主義、厄介なものには逆らわないいいかげんな性格なのだろうと思います。

こころと真田美織の間のあったことを、おそらく一方的に真田美織の意見をうのみにして「トラブル」といっていることがありました。
本来は、こころの話も聞いた上で間に入るべき担任教師の役割を放棄しています。

「かがみの孤城」は中学生の物語ですが、残念ながら、大人の世界でもこんなことは日常茶飯事です。
特に会社とはそんなものですよ。

とにかく読んでみてください

「本屋大賞」を受賞されたのも納得です。
最初はモヤモヤしながら読んでいましたが、ラストはいい感じです。
これでいい、という物語の終わりかたです。

でも1つ注意点。
「下」の最後のほうは、電車で読んだりするとえらいことになりますよ。
涙なくして読めないです。
ついでに鼻水も止まりません。

今日から数えて、TOU2023年度春の卒業式まであと348日です。

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