「動物ウイルスが人間を襲う!」中島 捷久・澤井 仁

読書 読書

「動物ウイルスが人間を襲う!」中島 捷久・澤井 仁 PHP研究所1,300円(税別)

SF小説か映画かと思わせるセンセーショナルなタイトルです。
内容はいたって真面目です。
著者の中島 捷久氏はウイルス研究の第一人者であり、澤井 仁氏は「日経バイオテク」「日経メディカル」の編集長を歴任されたかたでもあります。

細菌からウイルスへ

人類の歴史は病気との戦いでした。感染症は一度流行すると、多くの人々の生命を奪いました。
感染症のうち、細菌が引き起こすものは医薬品の力で抑制できるようになりました。「死の病」とされていた結核がよい例です。

今、世界規模で流行している新型コロナのようなウイルスが引き起こす感染症が、人類を脅かす存在となっています。

ウイルスとは

細菌・寄生虫は生物とされます。
しかしウイルスは自力で栄養を取得することもできず、個体を増やすこともできません。
人間・動物に感染し、細胞に侵入し、乗っ取ることにより、栄養を取得、個体を増やします。

本書によるとウイルスは「細菌より役者が上」なのだそうです。
細菌の場合、直接的な影響で器官にダメージを与えるだけのため、薬を使い、細菌を排除すれば、感染症より回復可能となります。

しかしウイルスの場合、細胞のガン化=細胞が正常に動作しなくなるような影響を与えるそうです。
この場合、ウイルスを排除しても、正常な細胞そのものがダメになっているので根本的な回復が難しくなります。
その他、免疫不全の原因ともなるため、単純に排除するだけでは問題は解決しません。

意外な仮定

ウイルスが巧妙な振舞いができる原因として、本書では「ウイルスはもともと、細胞内の遺伝子であった」という仮定が説明されています。
本書は2006年の出版です。現代でもこの点については結論は出ていないようですが・・・。

細菌や寄生虫は人間や動物にとっては完全に異物、ということは、細菌や寄生虫にとっては、人間や動物は完全にアウェイで戦うことになります。
しかしウイルスはもとはホーム。つまり人間や動物の体の仕組みを理解しているので、簡単に排除されない戦略を知っているということでしょうかね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました